著作権シリーズ:第2回 会社で作った資料やコンテンツ、著作権は誰のもの?
日々のビジネスで、資料やコンテンツを作成する機会は多いと思います。たとえば、企画書、プレゼン資料、Webサイトの文章や画像、製品マニュアル、広告、動画、業務用ソフトウェアなど。では、こうした「成果物」の著作権は、いったい誰に帰属するのでしょうか?
「会社で作ったんだから、当然会社のものでは?」
そう考えている方も多いかもしれませんが、著作権法の考え方は必ずしもそうではありません。
この記事では、社員が作成した著作物、外注先が作成したコンテンツ、共同制作の場合の著作権の帰属について、経営者が知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。
原則:著作権は「著作者」に帰属する
著作権法の基本ルールはシンプルです。
「著作物を創作した人=著作者」に著作権が発生する。
つまり、たとえ社員が勤務中に業務で作った資料でも、そのままでは著作権は社員にあるのが原則です。
ですが、これでは会社としては困ってしまいますよね。そこで例外として「職務著作」という制度が設けられています。
【社員が作った場合】「職務著作」とは?
社員が業務として作成した著作物について、一定の要件を満たす場合には著作権が会社に帰属します(著作権法第15条)。この制度が「職務著作」です。
✅ 職務著作の4つの要件
- 法人の発意に基づいて作成されたこと
⇒ 会社の指示や企画に基づいて制作されたもの - 職務上作成されたこと
⇒ 社員が業務として作成したものであること(パートや契約社員も含む) - 法人名義で公表されることが予定されていること
⇒ 公開時に会社の名前で発表することが前提 - 契約や就業規則で別段の定めがないこと
⇒ 特別な取り決めがあればそちらが優先
これらをすべて満たして初めて、著作権は会社に帰属します。
📌 経営者への注意点
- 就業規則や雇用契約で著作権の扱いを明文化しておくことが重要です。
- 社員が個人名義で成果物を発信していたり、SNSで公開している場合には「会社名義での公表」要件を満たさない可能性もあります。
【外注・フリーランスの場合】著作権は原則、制作側にある
デザイナーやライター、Web制作会社など外注先に依頼して作ってもらったコンテンツについては、基本的に著作権は外注先にあります。
「お金を払って作ってもらったのだから、当然こちらのものになる」と思いがちですが、発注者が自動的に著作権を取得できるわけではありません。
✅ 契約での取り決めが必須
- 著作権譲渡契約:著作権そのものを会社に移転する契約。自由に改変や再利用が可能。
- 利用許諾契約(ライセンス):使用の範囲(媒体・期間・地域など)を限定して認める契約。著作権は制作者に残る。
📌 経営者への注意点
- Web制作会社とのやりとりで「納品物は自由に使えると思っていたのに、後から『二次利用不可』と言われた」などのトラブルはよくあります。
- 契約段階で「誰が著作権を持つか」「どう使えるか」を明確にし、書面に残しておきましょう。
【共同で制作した場合】著作権は共有に
複数の人が協力して一つの著作物を作成した場合には、著作権は「共同著作者」全員に共有されるとされています(著作権法第65条)。
たとえば、
- 自社のマーケティング部と技術部が共同で制作したホワイトペーパー
- 企業と外部パートナーが協業して開発した動画コンテンツ など
このような場合、原則として著作権の行使には全員の同意が必要です。
📌 経営者への注意点
- 共同開発やコラボ制作では、著作権の管理責任者を事前に決めることが極めて重要です。
- 「誰がどこまでの範囲を使えるのか?」が不明確だと、後から思わぬ使用制限がかかる可能性があります。
【まとめ】著作権の帰属を明確にして、将来のリスクを回避しよう
会社で作られた資料やコンテンツでも、自動的に会社に著作権が帰属するわけではないということは意外と見落とされがちです。
経営者が押さえておきたいポイント
- ✅ 社員が作った資料でも、著作権が会社に帰属しないケースがある
- ✅ 外注や業務委託の場合、契約で「著作権譲渡」や「利用範囲」を明確にすることが必須
- ✅ 共同制作では著作権が共有になるため、権利行使には注意が必要
自社の大切な資産であるコンテンツを守るためには、著作権の帰属や利用ルールを「契約書」や「就業規則」でしっかりと整備しておくことが、事業の安心・安全につながります。
次回は、**「SNS・Webで見かけた画像や文章、勝手に使って大丈夫?」**というインターネット利用における著作権の落とし穴について解説します。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!
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