著作権シリーズ:第6回 社内でつくったマニュアルや教育資料 — 流用されないためには?
──社内資産の保護方法と、秘密保持・著作権表示の実務的アドバイス。
社員や外部関係者によって、社内で作成したマニュアルや教育資料が無断で流用されるケースが残念ながら繰り返されています。
さらに、社内資料の中に他社の著作物が混入していたことが後で発覚するなど、思わぬリスクも潜んでいます。
今回は、社内資料やマニュアルの著作権管理に焦点を当て、「うちの資料」が外部に流出しないための対策と、秘密保持・著作権表示に関する実務的なアドバイスをお届けします。
社内資料も著作物です──まずは著作権の基本を確認
営業資料、マニュアル、教育コンテンツ、動画、図表、スライド資料──
これらは「社内用」であっても、創作性があれば著作権の保護対象です。
✅ 作成した本人が自分の著作物だと思い込み、他所で再利用してしまう
✅ 他社の資料を参考にしすぎて、類似しすぎた内容を社内で共有してしまう
いずれも著作権侵害のリスクをはらんでいます。
よくある流用トラブル事例
❌ 退職社員が前職のマニュアルを持ち出し
→ そのまま別会社で使用した結果、前職企業から警告書が届いた事例も。
❌ ネットで見つけた研修資料を流用
→ 出所が不明な資料は、無断転載・無断使用の温床になりがちです。
❌ 他部署やグループ会社の資料を外部提案で使う
→ 社内共有はOKでも、社外利用は契約上アウトのケースが多いです。
社内資料の流用を防ぐための3つのステップ
✅ 1. 作成時点で「著作権表示」+「利用範囲」の明示を
資料やスライドの末尾・表紙に、以下のような表示を入れることで、無断流用を防ぎやすくなります:
© 2025 [個人名 or 法人名]. All rights reserved.
本資料は○○株式会社の社内利用に限り使用を許可されたものです。
社外への転載・配布を禁じます。
📌 明示することで、社員や外部委託者への意識づけにもなります。
✅ 2. 秘密保持契約(NDA)+著作権の帰属規定を徹底する
社外の協力先に研修資料や教育コンテンツの作成を委託する場合、
**「著作権は誰に帰属するか」**を必ず契約書で明記しておきましょう。
📌 業務委託契約書に以下の条文を設けるのが一般的です:
- 納品物の著作権は発注者に帰属する
- 第三者への提供・再使用は禁止
- 秘密保持義務は契約終了後も継続する
✅ 3. 退職・異動時のチェック体制を整備する
情報持ち出しリスクが高まるのが「退職時」です。
以下のチェックリストを人事・管理部門で整備しましょう:
- 社内ファイルの個人保管・持ち出しの有無
- 外部ストレージやクラウドへの転送履歴
- 社内研修資料・テンプレート類の返却
- 著作物の帰属や再利用禁止の再確認
📌 研修・開発・広報部門など、コンテンツを扱う部門は特に注意が必要です。
【補足】他社資料の流用にも注意を!
逆に、自社が他社の資料をうっかり流用してしまうケースもあります。
- Web上の公開スライドや無料テンプレート
- セミナー資料の抜粋
- 書籍・論文の図表や文言の引用 など
➡ 「誰も見てないから…」では済まず、発覚すれば信用問題+損害賠償に発展しかねません。
✅ 著作権処理ができない場合は、自社で一から作り直すことも選択肢に入れましょう。
まとめ:社内資産を守るには「制度」+「表示」+「意識づけ」
項目 | 対策内容 |
---|---|
✅ 著作権表示 | 「©表示」「利用範囲」などを資料に記載 |
✅ 契約整備 | NDAと著作権帰属条項を明記する |
✅ 制度設計 | 退職・異動時のチェック体制を導入 |
✅ 教育・啓発 | 著作権の基本を定期的に社内で共有 |
マニュアルや教育資料は、会社にとっての知的資産。
外に漏れたり、無断使用されたりしないよう、制度と文化の両面から守っていきましょう。
📘 次回(第7回)は、
「契約で著作権の所在を明確にする方法 ー 業務委託・共同開発における著作権の帰属と注意点」
について解説する予定です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!
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