著作権シリーズ:第9回 写真・イラスト・動画の著作権と肖像権

—知らずに侵害しないための基礎知識

会社のWebサイト、パンフレット、SNSなどで、社員や来場者の写真や動画を活用したい──
そんなときに注意すべきが「著作権」と「肖像権」です。

「社内イベントの写真を載せたら、クレームが来た」
「外注カメラマンに撮ってもらった動画の使い方に制限が…」

こうしたトラブルを防ぐために、今回は、写真・イラスト・動画に関する著作権と肖像権の基本知識と、スタートアップ・中小企業が気をつけるべき実務のポイントを整理して解説します。

1. 写真・イラスト・動画には「著作権」がある

まず押さえておきたいのが、写真やイラスト、動画などの“表現物”は、著作物として著作権の保護対象だということです。

つまり、

  • 社員が撮った写真 → 原則、社員(=撮影者)が著作者
  • 外部カメラマンに撮影依頼 → 撮影者に著作権が残ることが多い
  • イラスト・図解・映像 → 作成者に著作権が発生

著作権者が明示的に著作権譲渡利用許諾をしない限り、会社側が勝手に改変・二次利用・転載などをすることはできません。

2. 「人が写っている」写真や動画には「肖像権」が関係する

著作権とは別に、人の顔や姿が写っている場合は「肖像権」にも配慮が必要です。

肖像権とは、「自分の顔や姿を勝手に撮影・公開されない権利」のこと。
たとえ社員や取引先であっても、本人の同意なく公開・利用することは原則NGです。

3. 社内イベント・会議・オフィス風景などを撮影するときの注意点

社内やイベントの様子を記録・発信する際には、以下のポイントに注意しましょう。

✅ 写真・動画の利用目的を明確にして同意を得る

「社内報やSNSに掲載する可能性があります」など、事前に伝えておくことが重要です。

✅ 撮影同意書や同意チェック欄の設置

イベントの参加申込フォームや当日の受付で、同意のチェック欄を設けておくと安心です。

✅ 顔が特定できる写真は、ぼかしやモザイク処理も検討

映り込みの可能性がある場合、無断掲載は避けましょう。

4. 外注のカメラマン・クリエイターと契約するときのポイント

外部のカメラマンや映像クリエイターに依頼した場合、著作権の所在が非常に重要になります。

著作権を会社側に譲渡してもらうには?

  • 「著作権譲渡契約書」を書面で交わす
  • 「会社が自由に編集・加工・再利用できる」旨を明記する

※「発注者が費用を支払ったから著作権も譲渡された」は誤解です。

5. フリー素材・無料画像にも注意点あり!

「商用利用OK」の画像素材サイトであっても、次の点に注意が必要です。

  • 利用規約を必ず確認(編集・改変はOK?クレジット表記は必要?)
  • 人物が写っている素材 → モデルリリースが取得されているか確認
  • AI生成画像 → 著作権が不明確なケースも増加中

スタートアップ・中小企業が特に注意すべきポイント

創業初期や少人数体制の企業では、以下のようなリスクが見逃されがちです。

🔹 社員が撮った写真を無断で加工・再利用してしまう
撮影者に著作権がある場合、トラブルの原因に

🔹 社内イベントの写真をSNSに投稿したらクレームが来た
肖像権侵害のリスクがあるため、同意の取得が重要

🔹 制作会社に依頼した動画を転用しようとしたら制限されていた
契約時に著作権や利用範囲を明確化しておく必要あり

まとめ:写真や動画は「著作権」と「肖像権」のダブルチェックを!

チェックポイント対応策
撮影者の著作権は誰にある?撮影者との契約内容を明記・確認
写っている人の同意は取れているか?同意書やチェック欄の運用でカバー
フリー素材の利用条件は?規約をよく読み、必要なら表記や制限に従う

📘 次回(第10回)は、
著作物を勝手に使われた?対処法と、著作権侵害の警告・対応のポイント
について解説する予定です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!

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