著作権シリーズ:第10回 自社の著作物を勝手に使われてる?経営者が取るべき行動とは

―対処法と、著作権侵害の警告・対応のポイント

会社で作った資料やデザインが、知らないうちに他社に使われている。
Webサイトに載せた画像が、無断でコピー・転載されている。

そんな「著作権侵害」に遭遇したら、どうすればよいのでしょうか?
今回は、著作物を勝手に使われたときの具体的な対処法と、冷静に進めるためのポイントを解説します。

1. 著作権侵害とは?

著作権侵害とは、著作権者の許諾なく、著作物を利用(複製、公開、改変など)する行為です。
たとえば以下のようなケースが該当します。

  • 自社のWebページを丸ごとコピーされた
  • 作成したマニュアルを他社が勝手に再利用していた
  • ロゴや図解を無断で転用された
  • 自社動画の一部が他のYouTubeチャンネルで使われていた

著作権侵害は、民事上の損害賠償請求差止請求の対象となり、**悪質な場合は刑事罰(10年以下の懲役等)**もあり得ます。

2. まずは冷静に「証拠保全」

相手にすぐ連絡したくなるところですが、まず大切なのは証拠を押さえることです。

✅ スクリーンショットやPDFで記録

  • 侵害しているWebページのURL
  • 該当箇所がわかるスクリーンショット
  • 公開日時や投稿日時の表示も重要

✅ Wayback Machineなどで過去のページを確認

  • 相手のサイトが後から修正された場合にも備えましょう

3. 著作権を主張するには「権利の所在」が明確であること

著作権侵害を主張するには、自社がその著作物の著作権者であることを証明できることが前提です。

🔸 社内で作成したもの → 作成者が社員であること、業務として制作されたこと
🔸 外注先に依頼した場合 → 著作権譲渡契約や利用許諾契約の確認が必要

※外注物で著作権譲渡を受けていなければ、著作権者としての請求は難しくなります。

4. 相手への通知は段階的に進めるのが原則

🔹 第1ステップ:丁寧な連絡(内容証明でなくてもOK)

  • 「こちらの著作物が無断で利用されていることを確認しました」
  • 「すぐに削除をお願いしたく、ご対応をお願いします」

※この段階では、感情的にならず冷静に事実だけを伝えることが大切です。

🔹 第2ステップ:法的手段を示唆(内容証明郵便)

  • 連絡しても対応がない場合は、弁理士や弁護士を通じて内容証明郵便を送付
  • 損害賠償や刑事告訴の可能性に触れて警告を行う

5. SNS・インターネットでの拡散は慎重に

著作権侵害を受けた怒りから、SNSで「晒す」ような投稿をしてしまうケースもありますが、名誉毀損や営業妨害で逆に訴えられるリスクもあります。

正しい手続きを踏み、冷静に対応することが信頼につながります。

スタートアップ・中小企業が特に気をつけたいポイント

🔹 社内の誰が何を作ったか、記録を残しておく
社内制作物の著作権を明確にしておくことが重要

🔹 外注先との契約に「著作権譲渡」や「再利用の許諾」を明記
契約書で後々のトラブルを防ぐ

🔹 万一侵害された場合に備えて、日々の成果物をアーカイブ
元データや制作日を証明できるように保管

まとめ:著作物が侵害されたときの5つのステップ

ステップ内容
① 証拠保全スクショやPDF、日付つきの記録を残す
② 権利確認著作権者が自社にあるか確認
③ 丁寧な通知最初は冷静に連絡、感情的な対立は避ける
④ 内容証明等必要に応じて専門家を通じて正式に通知
⑤ 拡散自粛SNS等での公表は慎重に。逆リスクに注意

📘 次回(第11回)は、
「AI生成物の著作権──画像や文章は著作物になる?誰のもの?」
について解説する予定です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!

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