著作権シリーズ:第11回 AIが作った画像・文章に著作権はある?──生成AIと著作権の基礎知識
ChatGPTや画像生成AI(Stable Diffusion、Midjourneyなど)を使えば、誰でも簡単に文章や画像、動画を「創作」できる時代になりました。しかし、それらの生成物には著作権があるのでしょうか?また、AIが既存の著作物を学習して作ったコンテンツを使っても問題ないのでしょうか?
今回は、AIと著作権にまつわる基礎知識を、実務に関係するポイントを交えて解説します。
🔍 1. 生成AIが作ったものに著作権はある?
❗ポイント:著作権が認められるのは「人間が創作した著作物」のみ
日本の著作権法では、**著作権が発生するのは「人間の思想または感情を創作的に表現したもの」**に限られます。つまり、AIが自動で生成したもの自体には著作権は発生しないというのが現在の基本的な考え方です。
たとえば、以下のようなケースはどうなるでしょうか?
- ChatGPTに文章を生成させただけ ⇒ 著作権はない
- Midjourneyでプロンプトを入れて画像を生成 ⇒ 著作権は基本的に発生しない
- AIの出力物を元に人間が大幅に手を加えた ⇒ 加工部分に創作性があれば著作権が発生する可能性あり
つまり、「AIが作ったものには著作権がある」と思い込んで使うとトラブルになるリスクがあるのです。
⚖️ 2. 他人の著作物を学習して生成されたものは使ってもいい?
AIは、インターネット上の大量のデータ(画像、文章など)を「学習」して生成物を作ります。しかし、その学習データに著作権のあるコンテンツが含まれている場合、その「出力物」を商用利用していいのかどうか、問題になることがあります。
日本では、2024年5月時点で以下のような議論があります。
- 著作権法30条の4(情報解析)により、著作物を学習用に使うことは可能
- ただし、生成されたコンテンツが元の著作物に類似している場合は著作権侵害になる可能性もある
- 著作権者が「自分の作品をAIの学習に使わないで」と意思表示する動きも出てきている(例:NOAIタグなど)
**結論としては、「著作権侵害のリスクゼロとは言えない」**のが現実です。とくに、画像生成AIなどでは既存のキャラクターや有名なスタイルを模倣する例も多く、慎重な運用が必要です。
🏢 3. スタートアップ・中小企業が注意すべきポイント
生成AIを業務に取り入れる企業が増える中で、次のようなリスクを意識することが大切です。
✅ 注意点①:生成物に著作権があると思い込まない
「作った画像に社名を入れれば自社のものになる」と考えるのは危険です。誰でも再利用できる可能性があることを前提に活用する必要があります。
✅ 注意点②:第三者の著作物に似ていないか確認する
特に外注先がAIを使ってコンテンツを納品してきた場合、既存作品に酷似していないかをチェックしましょう。
契約書に「AI利用に関する責任条項」などを入れておくのも有効です。
✅ 注意点③:自社が提供するコンテンツの信頼性・独自性の維持
AI任せの情報発信ばかりでは、「誰でも作れるコンテンツ」と見なされてブランド価値を下げるリスクも。AIはあくまで補助ツールとし、「自社ならではの目線や工夫」を乗せて使う姿勢が重要です。
✏️ 実務アドバイス:社内ガイドラインを作っておこう
生成AIを使う場合、企業として以下のようなガイドラインを整備しておくと安心です。
- 生成AIの利用目的・範囲を明確にする(例:社内資料作成にはOK、広告素材はNG)
- AIで作ったコンテンツには著作権がない可能性があることを明示
- 外注先に対して、AI生成物の使用の可否・責任範囲を契約書で定める
📘 次回(第12回)は、
「スタートアップや中小企業が著作権を活かす戦略──攻めと守りの知財活用法」
について解説する予定です。
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🧑💼 黒川弁理士事務所|代表 弁理士 黒川陽一(京都)
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