【FA×知財シリーズ 第2回】「その技術、特許になります!」

― FA開発に潜む“特許のタネ”を見逃さないために ―

FA(ファクトリーオートメーション)分野では、センサ、制御、通信、ソフトウェアなど多様な技術要素が複雑に絡み合います。そのため、「特許になりそうな技術」が製品開発の中に数多く潜んでいます。

しかし現実には、その特許のタネに気づかないまま製品化してしまうケースが非常に多いのです。
今回は、FA開発において特許出願を検討すべき代表的な技術領域と、見逃されやすい「出願ポイント」を紹介します。


■ センサ技術:ハードと制御ロジックの両方に特許の余地

センサは、FAの「目」ともいえる重要な要素です。
構造そのものや、センシング原理に特許性があることは当然として、次のような点にも注目が必要です。

  • ノイズ低減、誤検出防止のための工夫
    例:周囲光や反射物体に対する自動補正処理など
  • 複数センサの組み合わせによる検出精度の向上
    例:画像センサ+近接センサの協調制御
  • 判定アルゴリズムの改良
    例:しきい値制御ではなく、時間変化を加味した判断ロジック

これらは一見、回路や構造に関係ない“ソフト的な工夫”に見えるかもしれませんが、「制御方法」や「信号処理方法」として特許請求項を立てることが可能です。


■ 制御技術:PLCやマイコン制御の“工夫”に価値がある

制御ロジックに関する出願は、FA機器において極めて重要です。
なぜなら、製品の差別化がハードではなく“使い勝手”や“性能バランス”に依存しているケースが多いからです。

例えば、

  • センサとアクチュエータの応答タイミングの最適化
  • 動作モードの自動切り替え(省エネ⇔高速)
  • フェイルセーフや安全動作の判断条件の設計

これらは、多くの場合「ソフトウェアの中」で完結してしまうため、技術者本人も「特許になる」とは思わないことが多いです。
しかし、実際には**“制御方法”として出願可能なアイデアが隠れていることがほとんど**です。


■ 通信技術・プロトコル:互換性と利便性の工夫に注目

FA機器は他の機器と接続して初めて価値を持ちます。そこで欠かせないのが、通信方式の工夫です。

  • 独自プロトコルによる通信効率の向上
  • 切断・再接続時の安定動作(リトライ制御など)
  • マルチデバイス接続における優先順位制御

特に、エッジデバイスとクラウドをつなぐIoT通信の領域では、「再送の判断基準」や「データ圧縮方式」、「時刻同期の方法」など、細かな仕様が特許の対象になります。

また、通信仕様の一部を意図的に非公開にして優位性を保ちつつ、部分的に特許出願するという戦略も有効です。


■ ソフトウェア・GUI:ユーザー体験そのものが特許になる時代

FA製品の現場での“使いやすさ”や“視認性”は、実は大きな差別化要素です。
そのため、次のようなUI・UX的な工夫も、知財として保護すべきです。

  • 作業者に応じた表示モード切替(熟練者用/初心者用)
  • トラブル時の自己診断・表示方法
  • アニメーションによる状態把握の補助表示

GUIの画面構成は意匠権として出願できる場合もありますし、表示ロジックは特許や著作権で保護できる可能性もあります。
最近では、「ユーザー支援の方法」として制御システムとGUIの連携処理を請求項に盛り込む特許出願も増えています。


■ よくある見逃し例:その“ひと工夫”が特許の原石かもしれない

FAメーカーで特にありがちなのが、以下のような「埋もれた発明」です。

  • 「現場からのフィードバックを受けて、動作パターンを少し変えた」
  • 「試行錯誤の末に最適なパラメータ調整の式を見つけた」
  • 「一つの機能に2つのセンサを併用する仕組みを入れた」

これらはすべて、**特許になりうる“工夫”**です。

重要なのは、「新規性のある本質的な発明」であるかよりも、**“他社が真似してきたときに困るかどうか”**という観点です。
特許の目的は“保護”であり、“差別化の確保”です。だからこそ、ささやかな工夫も知財視点で評価していくことが必要なのです。


■ 知財担当者がいなくても、「特許っぽいかも?」の意識を持つ

FA開発の現場では、開発者が知財の視点を持つことが極めて重要です。
「これは特許になりますか?」ではなく、「これって特許にできそうですか?」と気軽に相談できる体制があるだけで、出願の質と量は大きく変わります。

スタートアップや中小企業でも、外部の知財専門家と連携しながら、日々の開発の中に潜む“特許のタネ”を見逃さないようにしましょう。
FA業界における知財の攻めの第一歩、あなたの会社でも始めてみませんか?

次回(第3回)は、「ノウハウか?特許か? FA開発における秘匿と公開の判断基準」について解説します。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!


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