特許情報を活用した連携支援のリアル ― 神戸モデルに関わって感じたこと ―

こんにちは。
京都の弁理士・黒川です。

今回は、私が関わった
特許庁「知財経営支援モデル地域創出事業 のうち、
神戸市を支援した 「神戸モデル」 での経験について、
感じたことを書いてみたいと思います。

この事業では、
特許情報を活用したオープンイノベーション支援 をテーマに、
スタートアップと大企業との連携可能性を探り、
その提案まで伴走する取り組みが行われました。

知財というと、
どうしても「出願」や「権利化」の話に寄りがちです。
しかし今回の支援を通じて改めて感じたのは、
知財は単なる権利ではなく、
経営や連携の可能性を広げるための情報資産でもある
ということでした。

神戸モデルとは何か

神戸モデルの特徴は、
特許情報を起点にして連携候補を探索する ところにあります。

流れとしては、概ね次のようなイメージです。

つまり、
単に「技術が良いから会ってもらえるだろう」という話ではなく、
特許情報を使って相手企業の研究方向や事業構造を読み解きながら、連携の筋道を設計していく支援 です。

この点が、
一般的なマッチング支援や営業支援とは少し違うところだと思います。

実際にやってみて感じたこと

今回、弁理士として伴走支援に関わる中で、
いくつか強く印象に残ったことがありました。

まず感じたのは、
特許情報は「相手の技術を知るためのもの」だけではない
ということです。

もちろん、どんな技術分野に関心があるのか、
どのような研究開発を進めているのかを把握する上で、
特許情報は非常に有効です。

ただ、実際にはそれだけではありません。

  • その企業がどの領域に投資しているのか
  • どの研究テーマを重視しているのか
  • どこに事業の伸びしろを見ているのか

そういった、
経営や事業の方向性を読み解く手がかり としても、
特許情報はかなり使えます。

この点は、
今回の支援を通じて改めて実感したところです。

それでも、特許情報だけでは足りない

一方で、
特許情報があれば十分かというと、
もちろんそんなことはありません。

実際に連携を考える場面では、

  • その企業の組織構造
  • 誰が新規連携を見ているのか
  • どの部門が関心を持ちそうか

といった、
人と組織の理解 が非常に重要になります。

特許情報から技術の相性は見えても、
それだけで「会ってもらえる」わけではない。
ここが、実務としてはとても大きいポイントでした。

スタートアップから大企業への提案は、やはり難しい

今回の経験を通じて強く感じたのは、
スタートアップから大企業への連携提案は、やはり簡単ではない
ということです。

私自身、前職のオムロン時代にも、
特許情報を活用して外部技術や連携候補を探索する業務に関わっていました。
その経験も踏まえると、やはり

大企業から魅力的な技術を持つ企業やスタートアップにアプローチする方が、スタートアップから大企業に提案するよりも進みやすい

と感じます。

大企業側は「探す側」として候補を見に行けますが、
スタートアップ側はまず「会ってもらう」壁を越えなければなりません。

以前から私は、

  • 大企業 → スタートアップ は「探す側」
  • スタートアップ → 大企業 は「通過する側」

だと感じています。

やること自体は表面的には似ています。
しかし実際には、

  • 大企業は候補を比較できる立場
  • スタートアップはまず関心を持ってもらう必要がある立場

です。

つまり、
スタートアップ側は
「提案内容が良い」だけでは足りず、まず入口を通過しなければならない
この壁の高さは、実際にやってみると想像以上に大きいです。

ただ、「難しい」で終わらせないために

もっとも、
ここで「やはり難しい」で終わってしまうと、
スタートアップ支援としては少し寂しいとも感じています。

実際には、難しいからこそ
進め方に工夫が必要 なのだと思います。

たとえば、

  • 相手企業の技術だけでなく、事業構造や組織構造も理解すること
  • いきなり大きな提携を目指すのではなく、小さな接点から始めること
  • 技術の良さだけでなく、相手企業にとっての意味を言語化すること
  • 事業部だけでなく、経営企画や知財部門など横串の視点を持つ相手を見つけること

こうした点を意識するだけでも、
連携の可能性はかなり変わってきます。

特許情報は、そのための有力な手がかりになります。
ただし、特許情報だけで十分なのではなく、
人脈や組織理解と組み合わせて使っていくこと が重要なのだと感じました。

そもそもオープンイノベーションは、
そんなに簡単に成功するものではありません。
ただ、今回の事業全体の中では、実際に連携支援がうまく進んだ事例もあり、
だからこそ、この取り組みの意義は大きいと感じました。

キーパーソンは、事業部だけとは限らない

もう一つ大きな学びだったのは、
キーパーソンは事業部の中だけにいるわけではない
ということです。

連携の可能性を前に進めるには、

  • 経営企画
  • 研究企画
  • 知財部門

といった、
横串で見られる立場の人たち の存在が重要になることがあります。

技術的な相性だけでなく、

  • 会社としてどう位置づけるか
  • 既存事業との関係をどう整理するか
  • 他部署をどう巻き込むか

といった論点が出てくるからです。

ここも、
単に技術提案をするだけでは見えにくいところでした。

今回の経験は、「知財支援」より「経営支援」だった

今回の事業に関わって感じたのは、
これは単なる知財支援ではなく、

知財"も"活用した「経営支援」

だった、ということです。

特許情報を読む。
技術を整理する。
提案資料を作る。

そのどれも知財実務に近いようでいて、
最終的には
事業としてどうつながるか を考える必要がありました。

その意味で、
知財は独立した機能というより、
経営や事業を前に進めるための一つの視点 なのだと、
改めて感じました。

まとめ

神戸モデルに関わってみて、
特許情報の価値を改めて実感しました。

ただし同時に、
特許情報だけで連携が実現するわけではない、
という現実も強く感じました。

重要なのは、

  • 技術を読むこと
  • 企業を読むこと
  • 組織を読むこと
  • そして、人をつなぐこと

だと思います。

オープンイノベーションというと華やかに見えますが、
実際にはかなり地道で、
技術・事業・組織を行き来しながら仮説を組み立てていく作業です。

それでも、
特許情報を起点に相手企業を深く理解し、
適切な入口を設計することで、
連携の可能性は着実に高められる。
今回の経験を通じて、そうした支援の手応えも感じました。

知財を「権利化」のためだけでなく、
連携や経営の可能性を広げるための情報資産として使う視点 の大切さを、
改めて学ぶことができました。

🧑‍💼 黒川弁理士事務所|代表 弁理士 黒川陽一
📩 初回30分無料!お問い合わせはこちら
🌐 スタートアップ・中小企業の経営に役立つ知財情報を発信中!

#知財経営支援モデル地域創出事業 #神戸モデル #オープンイノベーション #特許情報 #知財経営 #中小企業支援 #スタートアップ支援 #弁理士