著作権シリーズ:第5回 著作権の保護期間はいつまで?切れたらどうなる?
著作権は、創作した著作者の人格と経済的利益を守る大切な権利ですが、永久に続くわけではありません。一定の期間が過ぎると、著作物は「パブリックドメイン」となり、誰でも自由に使えるようになります。
この記事では、著作権の保護期間とその起算点、保護期間が切れたあとの扱い、そしてスタートアップ・中小企業の経営者が特に気をつけたいポイントを整理して解説します。
著作権の保護期間:個人の場合は「死後70年」
日本では、個人が創作した著作物(小説、写真、音楽、ソフトウェア、動画など)は、著作者の死後70年間、著作権によって保護されます。
保護期間の起算点は、著作者の死亡した年の翌年の1月1日から数えます。
たとえば、2020年5月に亡くなった著作者の作品は、2090年12月31日まで保護されます。
かつては「死後50年」でしたが、TPP協定等の影響で、2018年に「死後70年」に延長されました。
法人が著作権を持つ場合の保護期間
法人が著作者となる場合、つまり「職務著作(会社が制作を指示・監督した著作物)」では、保護期間は下記のように変わります。
著作物の種類 | 保護期間 |
---|---|
映画以外の著作物 | 公表後70年 または 創作後70年のいずれか短い方 |
映画の著作物 | 公表後70年 または 創作後70年のいずれか短い方 |
📌 ポイントは、「死亡」ではなく、「公表日」や「創作日」から起算される点です。
保護期間が切れるとどうなる?──パブリックドメイン化
著作権の保護期間が満了すると、その著作物はパブリックドメインになります。これは、「誰でも自由に使ってよい状態」です。
たとえば以下のような著作物は、すでにパブリックドメインとなっています:
- 夏目漱石の小説(『坊っちゃん』『こころ』など)
- モーツァルトやバッハの楽曲
- 葛飾北斎の浮世絵
✅ パブリックドメインとなった著作物は、出版・配信・翻案(編集・加工)なども自由にできます。
⚠ ただし、「現代語訳」「注釈付き」「デザイン加工されたもの」には新たな著作権が発生していることがあるため、注意が必要です。
スタートアップ・中小企業が注意すべきポイント
✅ 自社で制作したコンテンツも「著作物」
社内で作成したマニュアル、研修資料、パンフレット、ホームページ、動画、デザインなどもすべて著作権の対象となります。
たとえ自社の社員が作成したとしても、「著作権の帰属」を契約などで明確にしておかないと、後々トラブルになることもあります。
📌 特に外注で制作を依頼した場合は、著作権が外部に帰属していることもあるため、契約書での明示が必須です。
✅ 古い作品や画像を使うときは「保護期間の有無」をチェック
インターネット上にある画像や文章は、自由に使えるとは限りません。
たとえ古い作品でも、翻訳・編集などが施されていると著作権が生じます。
📌 利用前には「著作権が消滅しているか」「著作権表示や利用条件があるか」を確認しましょう。
著作権フリーやクリエイティブ・コモンズ(CC)ライセンスも、条件をよく読みましょう。
※CCライセンス…インターネット時代のための新しい著作権ルールで、作品を公開する作者が「この条件を守れば私の作品を自由に使って構いません。」という意思表示をするためのツールのこと
✅ 保護期間の「起算点」の管理が重要
法人が著作物を所有する場合、公表日または創作日が保護期間の起算点になります。
そのため、「いつ作ったか」「いつ公開したか」の記録を残しておくことが、長期的に著作権を主張するうえで大切です。
保護期間に関する特例:戦時加算や国際的な影響
一部の著作物には、過去の戦争や国際条約の影響によって保護期間が延びている場合があります(例:戦時加算)。
また、外国の著作物については、日・米・EU間の条約などに基づき、日本での保護期間が異なることもあります。
✅ 海外の著作物を使う場合には、国際的な権利状況も確認しましょう。
まとめ
著作権の保護期間は、創作者だけでなく、使う側にとっても非常に重要なポイントです。
スタートアップや中小企業では、次の点に注意しておくことで、リスクを回避しつつ、著作物の活用を効果的に行うことができます。
- 自社で制作した資料・デザインの権利の帰属と保護期間を明確にする
- 他人の著作物を使うときは「本当に使ってよいのか」を必ず確認
- 古典的な作品でも、新たな著作権が付いている場合がある点に注意
- 外注時の契約書では「著作権の帰属」と「利用許諾の範囲」を記載する
- 保護期間の起算点となる「公表日・制作日」を記録しておく
著作権の知識を活かして、自社の資産とブランドを守りましょう。
📘 次回(第6回)は、
「社内でつくったマニュアルや教育資料を流用されないために ー社内資産の保護方法と、秘密保持・著作権表示の実務的アドバイス」
について解説する予定です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!
🧑💼 黒川弁理士事務所|代表 弁理士 黒川陽一(京都)
📩 初回30分無料!お問い合わせはこちら
🌐 スタートアップ・中小企業のための経営に役立つ知財情報を発信中!
#著作権 #保護期間 #パブリックドメイン #知財リスク管理 #スタートアップ #中小企業 #社内資料 #契約書 #コンテンツ制作