「大沢たかお祭り」と著作権──映画の画像をSNSで使うのはOK?NG?

先日のゴールデンウィークにX(旧Twitter)で話題になった「大沢たかお祭り」をご存知の方は多いかもしれません。
大沢たかお祭りとは、映画『キングダム』シリーズに登場する王騎将軍(演:大沢たかおさん)の名シーンを引用しつつ、
日常の「あるある」や皮肉を面白おかしく投稿するSNS上のムーブメントです。

SNSで拡散される投稿の多くには、**映画のワンシーン画像(スクショ)**が添えられています。
この「祭り」に笑ったり参加したくなった方も多いと思いますが……
このような投稿って、著作権的には問題ないのでしょうか?

本記事では、映画画像の著作権や、こうしたSNS投稿に潜むリスクについて、
法律面と実務面の両方から解説したいと思います。

「大沢たかお祭り」とは?──SNSを盛り上げたユーザーの創意工夫

「大沢たかお祭り」は、映画『キングダム』で圧倒的な存在感を放つ王騎将軍のセリフや表情を活かして、
ユーザーが日常の些細な体験や職場のあるあるネタを、スクリーンショット画像と一緒に投稿するムーブメントです。

例えば、

  • 上司に無茶振りされたときの心境 → 王騎将軍の不敵な笑みと共にセリフ風の一言
  • GW明けの出社に向かう自分を奮い立たせる → 「ンフフ…我が軍の勝利ですぞ」

といったように、映画のキャラや台詞に“別の文脈”を加える投稿が多く見られます。

これは、SNSならではの「共感・ユーモアの共有」による盛り上がりであり、
クリエイティブな表現の一つとも言えます。

しかし、この中で映画の画像を勝手に使うことについて、著作権の観点からはどうなのでしょうか?

映画のワンシーン画像に著作権はある?

結論から言うと、映画の画像や動画には、著作権があります。

映画は、通常の静止画や文章とは異なり、以下のような複数の権利の集合体です。

🎥 映画に関係する主な著作権

  • 映画の著作物としての著作権(映画製作者などが持つ)
  • 脚本家や音楽作曲者などの個別の著作権
  • 俳優の肖像権やパブリシティ権(→後述)

したがって、映画のワンシーンをスクリーンショットとしてSNSに投稿する行為は、
基本的に「著作物の無断利用」に該当
します。
つまり、本来は著作権者の許可(利用許諾)なしに行うことはできません。

映画の著作権は誰が持っているの?

映画の著作権は、以下のように複数の権利者が関わっています:

  • 映画製作会社や配給会社(一般的には、最終的な著作権者)
  • 脚本家、監督、音楽などの個別の権利者
  • 出演俳優の肖像権、パブリシティ権

つまり、映画の一場面を切り取って使う行為は、
複数の権利を同時に侵害する可能性があるのです。

「引用」ならOK?──著作権法における例外

では、「引用」として使えば問題ないのでしょうか?

著作権法では、正当な「引用」であれば著作権者の許可なく使えるとされています。
ただし、それには厳格な条件があります。

正当な引用の条件(主なもの):

  • 「引用の必要性」があること(例:批評・研究など)
  • 「引用部分が従」であること(=自分の主張が主、引用は補足的)
  • 出典の明示があること
  • 改変しないこと

SNSでのネタ投稿は、こうした「引用の条件」を満たしていないケースがほとんどです。
そのため、「引用だからセーフ」とは言いづらいのが実情です。

ではなぜ問題にならないのか?──著作権者が“黙認”している場合も

ここで一つ、現実的なポイントがあります。

SNSで多くのユーザーが映画の画像を使って投稿しているのに、
なぜ大きな問題になっていないのか。

それは、著作権者側が「黙認」または「大目に見てくれている」ケースが多いからです。

ときには映画の話題が広がることで宣伝効果も期待できますし、
過剰に規制することでファンの支持を失うことを避けたい、という判断もあります。

つまり、“問題になっていない”からといって、
「問題ない」わけではないのです。

著作権侵害はあくまで違法行為であり、
著作権者が問題視すれば、削除要請や法的措置がとられる可能性もあります。

著作権者へのリスペクトを忘れずに

たしかに「大沢たかお祭り」のような投稿は、
著作権者にとっても話題性やプロモーションとして機能する面があります。

しかし、著作権的にはグレーというより黒に近い行為であり、
それが容認されているのは著作権者の寛容さによるものに過ぎません。

SNS上では、

  • 軽い気持ちで画像を使ってしまう
  • みんながやっているから大丈夫、と思い込む

ということも多いですが、
**「この画像、本当に使ってよいもの?」**という一歩引いた目線がとても大切です。

最後に:SNSと著作権の良い関係を築こう

SNSは自由な発信の場である一方、
他人の権利に配慮することで、より健全で心地よい空間になります。

「大沢たかお祭り」も、著作権者や関係者へのリスペクトがあってこそ、
楽しめるムーブメントになるはずです。

著作権へのリスペクトを忘れずに、みんなが楽しいSNSに。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!

🧑‍💼 黒川弁理士事務所|代表 弁理士 黒川陽一(京都)
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