【レポート】ZET-Summit 2025 in 京都に参加!脱炭素社会の最前線を体感 - 知財戦略の視点から
先日、2025年2月4日(火)~5日(水)に、永守重信市民会館(京都府向日市民会館)にて開催された「ZET-Summit 2025」のDAY1に、参加しました。本記事では、その様子と、脱炭素社会実現に向けた最新の技術動向についてレポートするとともに、知財戦略の観点からの所感をお伝えいたします。
「コンピューティングの未来とサステナブルな社会」 - 日本IBM株式会社 山道 新太郎氏
開会挨拶の後、セッションは、日本IBMの山道新太郎氏による「コンピューティングの未来とサステナブルな社会」と題した基調講演から始まりました。山道氏は、今後のコンピューティングのキー要素として「Bits」「Neurons」「Qubits」の3つを挙げ、それぞれの技術がもたらす可能性について解説。特に、2nmプロセスによる高信頼性、非ノイマン型AIチップによる低消費電力、そして量子コンピュータによる時間効率の向上が、持続可能な社会の実現に不可欠であるというメッセージが強く印象に残りました。
「エネルギーインフラを支える蓄電池の重要性と役割」 - 株式会社KRI 千歳 喜弘氏、株式会社ジーエス・ユアサ コーポレーション 村尾 修氏
続くセッションでは、蓄電池の重要性と役割に焦点が当てられました。株式会社KRI特別顧問の千歳喜弘氏、株式会社ジーエス・ユアサ コーポレーション取締役会長の村尾修氏が登壇し、モデレーターのアドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役 小林大三氏とともに議論を深めました。
千歳氏は、リチウムイオン電池開発の背景にある磁気テープ開発の経験を語り、蓄電池のサイバーセキュリティと国産化の重要性を強調。村尾氏は、電力系統用蓄電池が再生可能エネルギー導入に伴う電力の不安定さを緩和する役割を担い、カーボンニュートラル社会の実現に不可欠であると述べました。
海外製品の安全性やサイバーセキュリティリスク、安値攻勢といった懸念事項も共有され、日本の高い技術力を活かした巻き返しへの期待が高まりました。特に、日本の蓄電池技術の劣化の少なさは、長期的な視点でのリユースやメンテナンスにおいて大きなアドバンテージになる可能性が示唆されました。
「日本発AIプロセッサが紡ぐ脱炭素社会への歩み」 - 株式会社Preferred Networks 牧野 淳一郎氏
株式会社Preferred Networksの牧野淳一郎氏は、同社が開発するAI向けプロセッサ「MN-Core」を紹介。GPUの消費電力増加という課題に対し、より高い性能を同じコスト・電力で実現することを目指していると説明しました。データセンターの消費電力増大が懸念される中、省エネ性能に優れた日本発のAIプロセッサが脱炭素社会に貢献する可能性を感じました。
「カーボンニュートラル社会を実現する技術」 - 特許庁 太田 一平氏
特許庁の太田一平氏は、カーボンニュートラル社会における蓄電池技術と水素技術の役割について解説。日本のカーボンニュートラル戦略における再生可能エネルギーの重要性を改めて強調しました。リチウムイオン電池の基本特許から実用化、そして世界的な普及までの流れを振り返りつつ、日本の車載用・定置用LIBのシェア低下、全固体電池における中国・韓国の追い上げといった現状を分析。水素技術においては、サプライチェーンの未整備という課題に触れ、今後の日本の戦略の難しさが示唆されました。
「“Sustainable”の先にある資源循環の未来」 - 京都大学 沼田 圭司氏、株式会社TOWING 西田 宏平氏
午後のセッションでは、資源循環の未来に焦点が当てられました。京都大学の沼田圭司氏、株式会社TOWINGの西田宏平およびモデレータの株式会社IN-Lab. 代表取締役 稲垣 博信氏が、農業におけるサプライチェーン全体でのCO2削減の必要性や、微生物を活用した土づくり、日本酒の発酵技法を応用した高機能バイオ炭「宙炭(そらたん)」技術などを紹介。社会実装に向けたマネタイズの難しさや、大企業とスタートアップの連携の重要性について議論が交わされました。
「米国脱炭素スタートアップの近況と日本企業のオープンイノベーションによる新事業創出のチャレンジ」 - 栗田工業株式会社 日高 勝彦氏、DNX Ventures 北村 充崇氏
米国における脱炭素スタートアップの投資動向について、栗田工業株式会社の日高勝彦氏とDNX Venturesの北村充崇氏が解説。2022年以降の投資減少の背景や、シリーズ別の投資状況、注目分野(輸送・交通、エネルギー、食料・農業)などが共有されました。日本企業がオープンイノベーションを通じて新事業を創出する上でのヒントが多く得られました。
「m-DAC®×鉄道で実現する脱炭素社会」 - Carbon Xtract株式会社 森山 哲雄氏、双日株式会社 中安 一仁氏、西日本旅客鉄道株式会社 千田 誠氏
Carbon Xtract株式会社の森山哲雄氏、双日株式会社の中安一仁氏、西日本旅客鉄道株式会社の千田誠氏によるセッションでは、JR西日本グループのゼロカーボン2050に向けた取り組みや、Carbon Xtract社の小型分散型CO2回収技術「m-DAC®」の鉄道分野での活用事例が紹介されました。大気中のCO2を直接回収し、農業など様々な分野での利活用を目指す革新的な技術に、大きな可能性を感じました。
「脱炭素社会を拓く未来のパワー半導体材料の可能性と世界への挑戦」 - 立命館大学 金子 健太郎氏、株式会社Power Diamond Systems 藤嶌 辰也氏
次世代パワー半導体材料の可能性を探るセッションでは、立命館大学の金子健太郎氏と株式会社Power Diamond Systemsの藤嶌辰也氏が登壇。SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)といった新材料の特性や課題、今後の展望について議論が展開されました。省エネルギー化に貢献するパワー半導体技術の進化に期待が高まります。
「脱炭素社会を拓くリユースバッテリー急速充電器と世界への挑戦」 - CONNEXX SYSTEMS株式会社 塚本 壽氏、三菱ふそうトラック・バス株式会社 尾﨑 幹秀氏
電動トラックの普及とバッテリーセカンドライフに焦点を当てたセッションでは、CONNEXX SYSTEMS株式会社の塚本壽氏と三菱ふそうトラック・バス株式会社の尾﨑幹秀氏、モデレーターのアドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役 小林大三氏がそれぞれの取り組みを紹介し議論。EVトラックの導入事例や普及に向けた課題、そしてリユースバッテリーを活用した急速充電器の開発など、持続可能な輸送システム構築に向けた最新動向が共有されました。
「フュージョン・スタートアップ対談」 - 京都フュージョニアリング株式会社 武田 秀太郎氏、株式会社EX-Fusion 森 芳孝氏、株式会社Helical Fusion 田口 昂哉氏
最終セッションでは、核融合エネルギーという究極のエネルギー実現を目指すスタートアップの経営者らが登壇。京都フュージョニアリング株式会社の武田秀太郎氏、株式会社EX-Fusionの森芳孝氏、株式会社Helical Fusionの田口昂哉氏が、それぞれの研究開発の現状や将来展望について熱い議論を交わしました。2050年の電力需要大幅増とカーボンニュートラル実現という二つの目標に対し、革新的な技術で貢献しようとする各社の強い意志が感じられました。
所感 - 知財戦略の観点
今回のZET-Summit 2025に参加し、脱炭素社会の実現に向けた技術革新の波を強く感じました。特に印象的だったのは、各分野における最先端技術の研究開発だけでなく、その社会実装やビジネスモデルの構築に向けた具体的な議論が活発に行われていた点です。
知財の視点から見ると、これらの革新的な技術は、企業の競争優位性を確立し、持続的な成長を実現するための重要な鍵となります。例えば、蓄電池分野における日本の高い技術力は、単に高性能な製品を生み出すだけでなく、その製造プロセスやリサイクル技術、さらにはサイバーセキュリティ対策といった周辺技術も含めて、知的財産として戦略的に保護していく必要があります。
また、AIプロセッサやCO2回収技術のような新しい分野においては、早期に基礎的な特許を取得し、技術的な優位性を確保することが不可欠です。さらに、オープンイノベーションを通じて生まれた技術については、共同研究契約やライセンス契約などを適切に締結し、権利関係を明確にしておくことが、今後の事業展開において重要なポイントとなります。
スタートアップ企業においては、限られたリソースの中で、どの技術を重点的に知財保護していくのか、事業戦略と連動した知財戦略を早期に構築することが成功の鍵を握ります。今回のサミットで発表された多くの技術シーズは、今後の社会変革を牽引する可能性を秘めており、これらの技術をしっかりと知財で守り、活用していくことが、日本全体の国際競争力強化にも繋がると考えています。
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