【IVS2025体験レポート】ディープテックとエンタメに見る知財のリアル

はじめに:知財の“現場感”を体感したIVS Week

2025年7月2日~4日まで、京都で開催されたスタートアップイベント「IVS(Infinity Ventures Summit)2025」。 弁理士としてスタートアップ支援に関わる私にとって、とても楽しみにしていたイベントです。京都なので近いですしね。

京都市さんやVCさんからもお声がけをいただき、イベントに参加してきました。 本記事では、ディープテック系スタートアップエンタメ系スタートアップを取り上げたいと思います。

まったく異なる分野に見える2つの世界。でも、どちらも「知財」がど真ん中にある。 その現場に触れて、気づいたこと、感じたことを、少しラフに綴ってみたいと思います。


ディープテック:やはり知財リテラシーが高い!

ディープテック系のピッチイベント、これはもう、熱量がすごかったです。 登壇していたのは、大学や研究機関からスピンアウトした技術系スタートアップたち。

  • リージョナルフィッシュ(京大発):地魚の品種改良をゲノム編集でやってしまう。しかも非GMOで社会実装を進めてる。
  • mui Lab(京都): IoTデバイスにより、家電というより“暮らしの一部”を作るをという発想。人とコンピュータの接点を作る。
  • EX-Fusion(阪大・光産業創成大学院大学発):レーザー核融合でエネルギー作るって壮大な話。桂ベンチャープラザに拠点あり。
  • リジェネフロ(京大発):iPS細胞で腎臓病の治療を狙うバイオベンチャー。IP創薬の真髄という感じ。
  • Space Power Technologies(京大発):天井からワイヤレス給電!?どこでもエネルギーを使える社会の実現。

ほかにも、AI、バイオ、センサー、風を“見える化”する企業まで。技術の幅がすごい。

で、特に印象的だったのは、知財リテラシーがめちゃくちゃ高いこと。 「当然のように出願済みです」「社内に弁理士います」「特許の棚卸し済ませてます」って、普通に言ってるんですよね。

技術系スタートアップにとって、特許は「守る」だけじゃなくて、「信頼を得る」ための資産。 だからこそ、経営レイヤーに知財担当がいても全然不思議じゃないなと。実際にCOOやっている方で弁理士の方ともお話させていただけましたし。

一方で、「海外出願はやっぱり厳しい」って声も多かったです。 国内の数倍の費用がかかるし、調達直後の資金では正直キツいというリアル。 補助金の活用もありますが、やっぱりそこは、戦略的な優先順位づけと伴走できる支援者がカギですね。


エンタメ領域:著作権は“はじめからある権利”

エンタメ系スタートアップのピッチでは、空気がガラッと変わります。私はこれまで全くエンタメ系との関わりがなかったので、ものすごく新鮮な気持ちでお話を伺いました。登壇していたのは、映像・音楽・VTuber・SNS・メタバースなど、“推し活”ど真ん中のスタートアップたち。

  • DouDoujin:CtoCtoCの出版モデル。創作が循環する世界観が面白い。
  • SeLn:推し活ファンに向けたAll-in-one LP。ファンマーケティングの発展形。
  • DTuber Production:顔出し不要のYouTuber支援。今っぽいですね。
  • HARTi:持ち運べるスマートプリクラ。デジタル×リアルの融合。
  • CHAMMI:SNSコンテンツのプロ。裏方の力で魅せていく。
  • STAGEBANK:薬局とコラボして著作権コンテンツをリアルに展開するという新しさ。

そして、驚いたのはスケール感。 「コンテンツ産業は現在5.8兆円、将来20兆円市場に」可能性が広がっていきますね。日本はIPの宝庫だと改めて感じます。 紙とデジタルの比率が72:28というのは意外でした。

この領域では、特許よりも著作権がメイン。生まれた瞬間に権利がある。 「誰が」「どこで」「どう使えるか」の整理こそが勝負どころ。 ライセンス、契約、そして“推しとの関係性”の設計が、そのままビジネスモデルになるんですね。


弁理士としての気づき:知財の価値は、分野を問わず重要だということ

ディープテック・エンタメの方とお話を伺って改めて思ったのは、知財の役割って、業界によって本当に違うなあということ。

  • ディープテックは、「まず守る」「出願して信頼を得る」「投資家に示す」が主目的。
  • エンタメは、「最初から持ってる権利(著作権)を、どう育てて収益にするか」が鍵。

でも、どっちの分野にも共通してるのは、“知財が価値の根幹にある”ということなんですよね。

だからこそ、弁理士は単なる出願屋さんではダメだなと。 事業にあわせた“知財の使い方”を提案できる存在でありたい。

どう守るか、どこまで広げるか、誰と組むか。 そういうところにこそ、これからの弁理士の腕の見せどころがあると思います。


おわりに:知財の“現場”に立ち会えてよかった

どちらの分野も、めちゃくちゃ面白かったです。新たな社会を創造しようと挑戦している方々の話はめっちゃ刺激を受けますね。そして、知財がちゃんと“武器”として使われている現場に触れられたことが、何よりの収穫でした。

スタートアップの成長って、アイデアや技術だけじゃなくて、それをどう守って、どう届けるかが大事なんですよね。 そこに知財がどう関わるか。そこに弁理士がどう関われるか。

そんなことを考える、IVSイベントでした。 熱い経営者の方々のお話を伺って、私ももっと知財活用によって事業成長にできるよう頑張りたいと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!


🧑‍💼 黒川弁理士事務所|代表 弁理士 黒川陽一(京都)
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