【FA×知財シリーズ 第6回】FA製品のブランド戦略と商標の活用法
―「名前」と「信頼感」を守る、見えない資産の話―
FA(ファクトリーオートメーション)業界において、製品の性能や品質はもちろん重要ですが、「ブランド力」もまた、顧客の選定に大きな影響を与える要素です。
たとえば、機器の導入を検討する際に「このブランドなら安心できる」と思わせる力。
それを守り育てるために欠かせないのが「商標」です。
今回は、FAメーカーにとっての商標戦略と、実務での活用ポイントを解説します。
■ 商標とは? ~「名前」「ロゴ」「音」も保護対象に
商標とは、商品やサービスを他と区別するためのマーク・名称・ロゴなどです。
FA分野では、以下のような対象が考えられます。
種類 | 例 |
---|---|
文字商標 | 「SmartDrive」「M-Servo」など製品名 |
ロゴ商標 | ロゴマークや企業ロゴ |
図形商標 | 特定のアイコンデザイン |
結合商標 | 文字とロゴの組合せ |
近年では、**音や動き(動き商標・音商標)**も商標として保護可能になっています。
■ FA業界での商標活用シーン
FA機器は、見た目や機能の差別化が難しいため、「ネーミング」が差別化のカギになる場面が多くあります。
◉ 製品シリーズの統一感と信頼性の演出
例:
- 「X-Drive」シリーズ、「ECO-Motion」シリーズ
- 共通プレフィックスで機能ごとのバリエーション展開
→ 製品群をまたいで**「この名前なら大丈夫」**という信頼感が生まれます。
◉ 海外展開時の信頼構築
商標登録があれば、現地での模倣対策や輸出時の信頼獲得にもつながります。
FA業界の国際取引では、「商標登録の有無で信用が変わる」こともあります。
■ 商標登録していなかったことで起きた事例(一部変更)
A社は「SPEED-LINK」という通信制御ユニットを展開していました。
一定のシェアを獲得していたものの、登録はしていませんでした。
ところが、海外の企業Bが「SPEEDLINK」という名称で類似製品を販売。
しかも、B社が先に現地で商標登録していたため、A社の製品がその国で販売禁止に…
→ 商標の先取りリスクは、国内外問わず大きなビジネス損失になり得ます。
■ 商標の登録ポイントと実務のヒント
1. 製品名・ロゴは開発初期に検討を
- 名前が他社と被っていないか確認(J-PlatPatなどで簡易検索を)
- 商標性のある名称を意識(「高速」、「高精度」など単なる機能説明はNGになることも)
2. 製品名は商標登録しやすい形に整える
- 登録しやすい例:独自造語「TRAXEL」(トラッキング制御技術から派生)、「MOTINEX」(モーション制御の新しい提案)など。
- 登録しにくい例:一般的な技術用語や機能を表す言葉の組み合わせ。
3. 海外展開予定があるなら早めに国際出願を
- マドリッドプロトコルによる出願は、複数の国への手続きを一本化でき、手間や費用を軽減可
- ASEAN諸国や中国など、模倣リスクの高い地域には早期対応を
■ 商標×意匠×特許のシナジー
FA製品では、「ネーミング(商標)」と「見た目(意匠)」、そして「技術(特許)」を組み合わせて知財戦略を立てるのが有効です。
たとえば:
- 「制御ソフトの機能」で特許
- 「UIデザイン」で意匠
- 「ソフトの名前」で商標
→ 各要素をパッケージで守ることで、真似されにくく、かつブランド価値のある製品に。
■ まとめ:「名前」を守ることは、「信頼」を守ること
FA製品は「性能で勝負」と言いたくなる業界ですが、製品名やブランドを通じた記憶・信頼・安心感こそ、顧客の選定理由になることも。
商標戦略は、性能だけでは測れない価値を創る、重要な知財施策です。
次回予告
次回(第7回)は「FA企業の著作権活用法~マニュアル・ソフト・図面の保護とは?」をテーマにお届けします。
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