市場・機能・技術・特許を一枚で見る ―― 事業化戦略をつなぐ「MFTP」的整理
こんにちは。
京都の弁理士・黒川です。
新しい事業や技術テーマを考えるとき、
事業側は市場や顧客価値を見て、
開発側は技術的な実現手段を見て、
知財側は特許として押さえるべきポイントを見ます。
どれも大事な視点です。
ただ、それぞれを別々に見ていると、
議論がどこか噛み合わないことがあります。
そんなときに役立つ考え方の一つが、
Market・Function・Technologyで整理するMFTフレームワークです。
さらに、そこへ特許の視点を加えると、
事業・開発・知財を横断した議論がしやすくなる。
私はそう感じています。
今回は、
市場・機能・技術・特許を一枚で見る
「MFTP」的整理について、
一般化した形で整理してみたいと思います。
MFTフレームワークとは何か
MFTは、一般に次の3つの視点で物事を整理する枠組みです。
- M:Market
誰に、どの市場で、どんな用途として提供するのか - F:Function
どんな機能や効用、価値を提供するのか - T:Technology
それを実現するための技術や手段は何か
この整理の良いところは、
単なる技術整理にとどまらず、
技術を顧客価値につなげて考えやすいところにあります。
技術だけを見ていると、
「何ができるか」は見えても、
「それが誰にとってどんな意味を持つのか」が曖昧になりがちです。
一方、市場だけを見ていると、
「何が求められているか」は見えても、
「それをどう実現するのか」が弱くなりやすい。
その間にFunctionを置くことで、
市場と技術をつなぐ視点が生まれます。
そこに特許を加えるとどうなるか
ここでは便宜的に、
MFTにPatentの視点を加えた整理を
MFTPと呼ぶことにします。
Market、Function、Technologyに加えて、
Patent、つまり特許の視点を並べて見ることで、
- どこを特許で押さえるのか
- どこが差別化の核なのか
- どこが模倣されやすいのか
- どこが権利化しやすく、どこが難しいのか
という観点を、
事業や技術の議論と同じ場に載せやすくなります。
特許は、出願書類の世界だけで完結するものではありません。
事業の中でどう位置づけるのか、
技術の中でどこを核と見るのか、
競争の中でどこを押さえるのか。
そうした視点と一緒に見た方が、本来は使いやすいものだと思います。
MFTP的整理の目的は何か
ここで大事なのは、
MFTP的整理の目的を小さく置きすぎないことだと思います。
新規事業・用途探索や、新製品開発・機能開発に使うこともありますし、
出願戦略の整理に使うこともあります。
実際、私自身は出願戦略に使う場面が比較的多かったように思います。
ただ、それらはあくまで個別の使い方です。
もっと上位の目的としては、
事業化戦略を、事業・開発・知財の共通言語で整理すること
にあるのではないかと感じています。
新規事業・用途探索はMarket側を広げる作業ですし、
新製品開発・機能開発はFunctionやTechnologyを具体化する作業です。
その上で、Patentの観点も含めて全体を見直すことで、知財戦略や出願戦略の整理につながります。
つまり、どれも
事業化戦略を構造的に見るための一部として位置づけた方が、
全体像が見えやすいと思います。

一つの絵を見ながら議論しやすい
私がこの整理の良いところだと感じているのは、
事業・開発・知財を一つの絵の中で接続しやすいことです。
事業側は、市場や顧客価値に自然と目が向きます。
開発側は、技術や実現手段に自然と目が向きます。
知財側は、特許で押さえるべきポイントや競争優位に自然と目が向きます。
それぞれの関心は違っていて当然です。
無理に同じ言葉で揃えようとすると、
かえって議論しづらくなることもあります。
ただ、同じ図の中に、
- 市場
- 機能
- 技術
- 特許
を並べて見えるようにすると、
少なくとも会話の前提をそろえやすくなると感じます。
特にFunctionを真ん中に置くことで、
「結局、何の価値を出したいのか」
という共通の話題が生まれやすい。
この点は、部門横断で議論するときにかなり大きいと思います。
他社情報も重ねると、パワーバランスが見えやすい
この整理は、自社情報だけでなく、
他社情報も重ねて見ることで、さらに有効になると感じています。
自社だけを見ていると、
- 自分たちは何をやりたいのか
- どこを押さえたいのか
という、どうしても内向きの議論になりやすいです。
一方で、他社情報も合わせて見ると、
- どの市場に既にプレイヤーがいるのか
- どの機能が競争軸になっているのか
- どの技術が代替し得るのか
- どこが既に特許で押さえられているのか
が見えてきます。
そうすると、
自社の立ち位置や、どこで勝負すべきか がかなり見えやすくなります。
特にPatentまで入れると、
単なる機能比較にとどまらず、
競争のパワーバランスや参入余地 まで見えやすくなる。
ここはMFTP的整理の面白いところだと思います。
ただし、まとめるのは簡単ではない
もっとも、この整理は簡単ではありません。
市場、機能、技術、特許を横断して並べるには、
それぞれ異なる立場の情報を持ち寄る必要があります。
実際には、
- 技術の説明はあるが、顧客にとっての機能として言語化されていない
- 用途の話はあるが、技術的な裏付けが弱い
- 技術の強みはあるが、特許としてどこを押さえるべきかが整理されていない
ということも少なくありません。
さらに、関係者が多いほど、
情報はどうしても散らばります。
事業の言葉と、開発の言葉と、知財の言葉は、
似ているようで微妙に違います。
そこに特許の観点まで加えると、
整理の負荷はやはり小さくありません。
その意味では、
有効なフレームワークである一方、
まとめること自体はそれなりに大変です。
今ならAIで整理の初動を軽くしやすい
ただ、最近はこうした整理作業に
AIを使いやすくなったと感じます。
もちろん、
目的設定そのものや、
最終的な判断までAIに任せることはできません。
一方で、
- 技術メモをM・F・T・Pの観点で整理し直す
- 用途案を機能の言葉に置き換える
- 抜け漏れを洗い出す
- 論点のたたき台を作る
といった作業では、
AIはかなり使えます。
以前なら手作業で時間がかかっていた部分も、
今は初動の整理を軽くしやすくなりました。
全部を自動化できるわけではありませんが、
議論のたたき台を作るまでのスピードは上げやすい。
これは実務上かなり大きい変化だと思います。
フレームワークはあくまで手段
ただし、一番大事なのはここです。
MFTやMFTPは、
万能な答えを出してくれるものではありません。
あくまでフレームワーク、つまり手段です。
用途開発や新規事業の検討に使うのか。
競争環境の把握や、他社との技術的な位置関係を整理するために使うのか。
知財戦略や出願方針を整理するために使うのか。
あるいは、部門横断で対話するための土台として使うのか。
目的によって、
同じ枠組みでも使い方は変わります。
この目的が曖昧なままだと、
表を埋めること自体が目的になってしまいます。
それでは、せっかく整理しても生きた議論につながりません。
まず、何のために整理するのかを決める。
その上で、必要な枠組みを使う。
この順番が大切だと思います。
まとめ
MFTは、市場・機能・技術をつなぐための便利なフレームワークです。
そこに特許の視点を加えることで、
事業・開発・知財が一つの絵を見ながら議論しやすくなります。
新規事業・用途探索、新製品開発・機能開発、
知財戦略や出願戦略の整理など、使い方はさまざまです。
ただ、それらを支える上位の目的としては、
事業化戦略を、事業・開発・知財の共通言語で整理すること
にあるのではないかと思います。
さらに、他社情報も重ねて見ることで、
競争環境の中での自社の立ち位置や、
どこで差別化し、
どこに参入余地があるのかも見えやすくなります。
一方で、この整理には手間がかかりますし、
目的設定なしではうまく機能しません。
今はAIを補助的に使うことで、
その初動の負担を少し軽くしやすくなっています。
フレームワークを目的化するのではなく、
まず何を実現したいのかを定める。
そのうえで、そのための手段として使う。
そうした姿勢が大事なのだと思います。
🧑💼 黒川弁理士事務所|代表 弁理士 黒川陽一
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