【FA×知財シリーズ 第7回】FA企業の著作権活用法―マニュアル・ソフト・図面も「創作物」です―
「著作権」と聞くと、音楽や小説のような“文化作品”を思い浮かべるかもしれません。
しかし、FA(ファクトリーオートメーション)の現場でも、知らず知らずのうちに多くの“著作物”が生み出されています。
本記事では、FAメーカーや機器開発企業が持つマニュアル・ソフトウェア・設計図面などをどのように著作権という視点で保護・活用できるのか、実務目線で解説します。
■ FA業界における「著作物」とは?
FA分野で対象になりうる著作物には、次のようなものがあります:
著作物の種類 | 具体例 |
---|---|
ソフトウェア | PLCプログラム、制御用アプリケーション、UI設計など |
マニュアル・手順書 | 機器の操作マニュアル、配線手順書、保守点検ガイドなど |
設計資料・図面 | 機構設計図、制御回路図、レイアウト設計図 |
プレゼン資料・カタログ | 製品紹介資料、仕様説明書、提案書など |
これらは、**創作性(創意工夫)**があれば、著作権法上の「著作物」として保護されます。
著作権法では、「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されています(著作権法第二条第一項第一号)。
つまり、「届け出」や「登録」をしなくても、作成した時点で自動的に権利が発生するのが特徴です。
■ 著作権のメリットと限界
著作権は、他の知財権と異なるメリット・限界を持っています。
◉ メリット
- 登録不要で自動的に権利が発生
- 技術ではなく「表現」を保護できる
- 不正コピーや模倣に対し、民事・刑事で対応可能
◉ 限界
- 「アイデア」自体は保護されない
→ 例:マニュアルの操作内容(アイデア)はNG、文章表現ならOK - 誰が先に作ったか証明しづらい場合も
→ 紛争対策には「社内保管」や「タイムスタンプ」が有効
■ FA分野での著作権トラブル例
あるFA企業A社が、受託開発でPLCプログラムと操作マニュアルを納品。
しかし、その後、クライアントがマニュアルの記述やUI設計をそのまま転用して別のベンダーに再発注したという事例。
→ A社の書いた内容や画面構成が著作物であることに気づかず、権利侵害となるケースがあるのです。
■ 実務で著作権を活用するためのポイント
1. 「誰が著作権を持つか」を契約で明確に
- 下請けとして開発する場合:「成果物の著作権は○○に帰属」と明記
- 社内作成物であっても、外注や協力先が関与しているなら要注意
2. 著作物だとわかるように明示する
- マニュアルや図面に「©○○株式会社」などを記載
- ソースコードに著作権表示を入れる(著作年・著作者名)
3. コピー・改変を制限したい場合は明文化
- 使用許諾契約や業務委託契約の中で、「無断転載・改変不可」とする
- パートナー企業への提供時も一言添えることで抑止効果がある
■ 著作権は「守り」の知財、だけじゃない
FA企業にとって、著作権はコピー防止だけでなく、「教育コンテンツやノウハウの資産化」にもつながります。
たとえば:
- 操作マニュアルや教育動画をパッケージ化し、製品価値を高める
- ソフトやUIの表現を他社と差別化し、ブランド戦略に組み込む
→ 技術ではない部分でも知財を活用することで、「選ばれる理由」を増やすことが可能です。
■ まとめ:「文書」「図面」も立派な知的財産
FA業界では、「設計したもの」「組んだプログラム」「作ったマニュアル」は、単なる業務成果物として扱われがちです。
しかし、そこには創作性と独自性があり、著作権という武器で守ることができます。
文書化されたノウハウも“価値ある資産”。
今こそ、著作権という視点を取り入れて、自社の見えない財産を守りましょう。
次回予告
次回(第8回)は「FA技術者が知っておくべき『営業秘密管理』とノウハウ戦略」をテーマにお届けします。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!
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